私たちはいろんな仕事で頑張っています
プロセス化学という分野
松岡 卓(52期生 株式会社ナードケミカルズ勤務)
皆さんは化学と聞くとどういう印象を持つでしょうか。白衣を着て、試験管を振って、新薬を開発する。恥ずかしながら、大学に入るまで私もそのように漠然と思っていました。
実はそういった創薬と呼ばれる分野は極一部であり、私はそれとは異なるプロセス化学という分野で研究開発・製造を行っています。皆さんのイメージとは異なり、毎日作業着、ヘルメットを被って工場に行き、創薬で見つけられた医薬候補品を育て上げています。
皆さんは手元にある薬がどの薬局に行っても当たり前のようにあると思っているかもしれませんが、この「当たり前」はプロセス化学者の努力の結晶です。この「当たり前」を達成するために毎日毎日頭を悩ませています。効率性、生産性、安全性を考えながら、ここで作られたものが世の中に出て人の役に立つ。それこそがプロセス化学の醍醐味でもあり、楽しみでもあります。
「創薬分野は私が行っているようなプロセス化学と、メディシナル化学とが二人三脚で成り立っています。メディシナル化学では新しい医薬品候補を見つけ出すため、構造の探索、生物活性などを主に行うため、有機合成の知識はもちろん、生物の分野もしっかり勉強しておくのがよいと思います。
またプロセス化学についても有機合成を幅広く知っておくほうが良いですし、実際にプラントを動かす上で工学的な知識(撹拌など)、分析についても詳しくなる必要があります。
有機合成の知識は化学科と名前のつくところに進学すれば自ずと学べますが、現時点で薬を一から作りたいと思っている人は薬学部で有機合成を学べるところをオススメします。
プロセス化学を学んでみたいと思った人は工学部を目指すのがよいと思います。
プロセス化学の魅力は、メディシナル化学で見つけた候補化合物を医薬品に育て上げることができることです。医薬品は広く一般の人に渡るよう大量に作ることができて初めて意味をなします。少量しか作れなかったものを大量に作ることができるようになるには、少量で見えなかった問題点をいくつも解決していかなければいけません。これらの解決ができたときの達成感を味わって以来、この職業から抜けることはできないと思うようになりました。
私の働いている会社は受託会社で、医薬品メーカーなど様々な顧客から多種多様な合成をお願いされます。中にはこれまで経験のない反応や化合物を扱うことも多く、日々新しい勉強ができるのは楽しさでもあり、苦労していることかもしれません。普段から心がけていることは顧客の要求以上の成果(より高品質のもの、希望量以上の納品など)ができるようにすることです。最近では少しずつこれらができるようになったからか、よく案件を請け負う顧客から、「また松岡さんに検討してもらえるなら安心です」と言って頂くことがあり、大変嬉しい思いをしました。こういったつながりができるのもこの業種の魅力かもしれません。