私たちはいろんな仕事で頑張っています
公務員といっても一辺倒じゃない
浦 隆文(33期生 農林水産省勤務)
国家公務員という言葉から連想するイメージは、どのようなものでしょうか。
昔だと、8時30分から仕事をはじめ、「17時まで仕事をして定時に帰宅する」、「決まった仕事さえしていれば良い」、「給料が良く身分が保証されている」という楽で安定した職業というイメージを感じていた方が多かったのではないでしょうか。または、「国の未来を創造」し、「大きな影響力のある事業を企画」したり、「困っている人たちを支援する業務を行う」というやりがいのあるイメージでしょうか。はたまた、霞ヶ関の不夜城(真夜中にも仕事をして、一晩中明かりが点いている。)や多くの不祥事、馴れ合いや前例主義といったネガティブなイメージを持っている方も居るかも知れません。
国家公務員の基本的なルールは法律で定められてはいますが、内閣府や総務省、財務省や私が所属している農林水産省など業務は非常に多岐に渡っており、それぞれの省の中でさらに部門が分かれていることもあり、同じ国の機関であっても業務内容や仕事のやり方、雰囲気などは大きく異なります。
今回は、私の経験についてお伝えさせていただきます。
私は、高校卒業後に三重大学生物資源学部生物資源学科に進学し水産学コースで海洋物理学を専攻、一般的な国家公務員試験ではなく農林水産省水産系技術職員採用試験により採用されました。
新規採用時は、農林水産省中国四国農政局愛媛統計情報事務所(当時)に配属され、農家さんや農協・漁協の職員さんからお話を聞き、また実際に田畑やみかん山へ出向き泥だらけになりながら農作物や漁業・養殖業の生産量を調査していました。
東京の農林水産省への異動後は、全国の魚市場での魚介類の取扱量や漁業・養殖業の生産量に関する調査結果の取りまとめなどを行いました。
その後、水産庁に異動し、水産資源の資源量調査や水産加工場の衛生管理と輸出振興、さらには太平洋島嶼国への漁業に関する技術支援などに関する業務を行いました。
また、外務省へ出向しミクロネシア連邦というグアムの向こう側の島国とトリニダード・トバゴというカリブ海の島国の大使館に勤務し、ODA(政府開発援助)を担当するという経験もしました。
農林水産省の職員になって、農業や漁業の現場に行くたびに、農家・漁家さんの苦労が理解でき、食物に対する感謝の想いが沸いてきます。
また、国会で質問が当たった時などは、深夜(場合によっては翌朝)まで職場で資料を作成したり、大きな問題が発生した時などは平日ずっと職場に泊まり週末にしか帰宅できない経験もしましたが、国内の農業・漁業を守るというやりがいがあります。
海外の大使館に出向することは、外務省以外の省庁では少数派かも知れませんが、現地の人々と仲良くなり、その国の課題を分析し、コミュニティーにおける生活の質の向上や産業振興を支援したり、時には相手国の国全体の社会・経済を支援する大きな経済協力を実施したりと非常にやりがいのある業務に携わることが出来ます。
省庁にもよりますが、国家公務員は、転職をしなくても非常に幅広い仕事を経験し、日本全国のこと、業務によっては世界を相手に仕事をすることが出来る、とても魅力のある仕事です。
もちろん、その分、残業が多かったり、上司や外部からのプレッシャーが大きいことも事実で、体調や精神を病む方も少なからず居ます。
また、特に理系の方は、民間のそれなりの規模の企業の方が年収が良いという話も聞きますし、多くの都道府県や政令指定都市の公務員と比べても給料は低めです。
それでも、やはり日本全国を出張したり転勤したり、はたまた海外赴任してみたりと、本当に多種多様な経験が出来る。それらを魅力と感じる方には、お勧めできる仕事だと思います。
今、ご自分が持っている国家公務員のイメージに囚われず、どのような仕事があって、どのようなことが出来るのかを調べてみると、意外と興味の持てる職種が見つかるかも知れませんよ。
ちなみに、、、海外赴任は、日本では考えられない現地の常識や日本とは異なる考え方にビックリしてみたり、日本の食材が手に入らない状況でどのようにして自分の好きな料理を作るか試してみたり、自分でも知らなかった一面が明らかになるとっても楽しい機会でした。