(2023年3月2日=卒業式を終えて)
「どうする芸文卒業生」
緑友会長 川本正人(21期)
「よっしゃー!」と雄叫びを上げたのは、暮れのサッカーW杯以来。緑友会副会長の末浪芫樹さん(芸文2期)から先月、「芸能文化科の志願者数が定員に達しました」とLINEが入ったときです。簡潔な文面から歓喜をグッと抑える様子が伝わってきて、こちらもグッ。
かつて競争率2倍以上だった同科が、ここ2年は1993年の創設以来初の定員割れ(一昨年0.85倍、昨年0.53倍)。大阪府が「定員割れが3年連続し、改善見込みがなければ再編対象」と条例で定めているためハラハラしましたが、3年目の志願者は定員ぴったりの40人でした。
この間、同科は卒業公演のライブ配信、外部行事への出演など、認知度を上げる施策をいくつも講じていました。中でも特筆したいのは、同科全学年の全生徒による中学校訪問です。生徒たちが自分で連絡を取って母校に赴き、かつての担任や部活顧問らに近況や活動をプレゼン。その結果、中学校から「生徒が見違えるほど立派になっていた」「同科のことがよくわかった」といった感想が寄せられ、出前授業を依頼してくるところまであったといいます。
学科長の久下英孝さん(28期)が、数年前の緑友会報に「行事や芸を頑張るだけでなく、普通科以上に普通の生活をするスーパー高校生であれ」という旨の一文を寄せておられました。その願い、しっかり通じましたね、久下先生。
人類の財産である芸能文化。でもその担い手は、世界中いつの時代でも、必ずしも経済的に恵まれていたわけではありません。定員割れの背景には、コロナ禍で暮らしが不安定になる担い手の姿もあったのでしょう。だからこそ、志願者が少数でも、いや少数だからこそ、その道を志した子どもたちを大事にしたい。人気や経済効率で「教育仕分け」をしてほしくない。そう思うのです。
とは言っても危機は続いています。どうすればいいか。元関西大特任教授の竹内啓三さん(教育行政学、10期)に「実(じつ)を示すことだ」と教わりました。巣立ってからの姿や成果を伝える、ということです。これができるのは卒業生。改修中の緑友会ホームページに会員のSNSリンクを張り始めたのも、みなさんの活躍を広く知ってほしいからです。
在校生は「実」を伝えました。次は卒業生の番。語れることはたくさんあると思います。みなさん一人ひとりが自分の「大河ドラマ」の主人公なのですから。