会長だより ㉑ おいちゃんのお稲荷

(2023年11月14日)

おいちゃんのお稲荷

緑友会長 川本正人(21期)

食堂を営んでいたおいちゃん(64)は、5年前に奥さんをがんで亡くしました。親子遊びなど楽しい時間を提供するボランティアサークルで活躍した人でした。緩和病棟に入り、自分は何も口にできなくなってからも、夫の作るうどんやすしを家族やお見舞いの人々に食べてもらい、それをうれしそうに眺めていたそうです。

おいちゃんが2年前にキッチンカーを買ったのも、介護施設などで暮らす人たちに、出来立ての料理を食べてもらいたかったから。「あの時のヨメさんの顔が、忘れられへん」という理由です。

この11日(土)、母校の恒例行事「チャリティー100㎞リレーマラソン」に、そのキッチンカーがやってきました。40年間頑張ってきた店を5月末に閉じたばかりのおいちゃんが、緑友会の応援炊き出しに、ボランティアで参加してくれたのです。

藍染めの作務衣を着込んで車内にこもり、生徒たちに振る舞ったのは稲荷ずし。一皿2個で、1つにはカニかま、チーズ、べったら漬け、もう1つにはツナマヨ、しば漬け、しいたけ昆布、べったら漬けをのせた、若者向けのオリジナル。正午のスタートに先立ち、朝8時から延々6時間、1030個を黙々と詰め続け、順に走り終えた生徒たちが「うまっ」「おいしい」と一皿残らず平らげてくれました。

「ヨメさんの遺志を継ぐって言うたらたいそうやけど、あんなに喜んでもろて、やってよかったわ」とおいちゃん。旧友たちにそう呼ばれる21期生、堺市「志乃家」の出張料理人・伯井弘行さん、ごちそうさまでした! ホンマ、おおきに!

チャリティー100㎞リレーマラソンは、生徒たちが1周250㍍をリレーし、賛同した人々からの寄付金をネパールの子どもたちなどに贈る取り組みです。今年で18回を数え、緑友会も近年、コースわきにエイドステーションを設けて応援しています。これまでは市販の飲食品の提供でしたが、今回は「ライブ感のあるにぎわい空間づくり」「卒業人材の活用」というコンセプトを前面に、初めて炊き出しにしました。

提供したのはキッチンカーの稲荷ずし、大鍋の豚汁、デザートのミカン。すし米10升は会員4人が家で炊き、伯井さんの用意した酢などを合わせて持ち込みました。豚汁の野菜も3人が前日に刻んで1回分ずつ袋に小分け。当日は伯井さんと事務局の女性スタッフが揚げにすし米を詰め、この日初めて応援に来てくださった男女7人の21期生らがトッピング。豚汁はプロパン3本と五徳3基に携帯コンロも併用し、会の役員やスタッフが約500杯を出しました。

「縁は異なもの」と題した「会長だより①」から20回超。こうした取り組みを通じ、ご縁の大切さを一層強く感じるこのごろです。伯井さんの登場でチャリマラの風景が一変したように、2万8000人を超える卒業生がそれぞれの形で協力し合えば、緑友会は相当の力を発揮できるはず。伯井さんとの経緯を含め、さまざまなご縁、ご協力については、改めてご紹介します。
100kマラソン