会長だより ㉗ さらば昭和の大天井

(2024年7月10日=学校食堂改修の着工日に)

さらば昭和の大天井

緑友会長 川本正人(普通科21期)

建物には年代を感じさせる部分があります。母校の食堂では「天井」。シミや反りのあるプツプツ穴の吸音ボード、360度首を回し続ける扇風機、ジージー・チカチカの蛍光灯……。窓がサッシになり、壁に耐震補強が施されても、見上げれば一面の昭和レトロです。

10日、その天井の撤去が始まりました。食堂を多目的ホールに改修する創立70周年記念事業の着工です。構想浮上から1年8か月。「よくぞここまで」と皆様のご支援に感謝しながら、この間何度も仰ぎ見てきた天井に「お疲れ様」と告げました。

思い返せばこの天井。事業の可否を決する懸念材料とキーパーソンを、同時にもたらしました。経過報告を兼ねてご紹介します。

取り外される食堂扇風機。4台とも別の所で再利用予定。床の板は張り替えられるテーブルの天板。

ホール化の発端は、一昨年11月に開かれた学校と緑友会との周年行事検討会。学校側から「食堂に空調設備がほしい。多目的に使えるようにもできないか」という案が出ました。未だに空調がなく、220平方㍍もあるのにほとんど活用されていない施設。着眼点はすごくいい。けれど「どうやって進めるの?」「いくらかかる?」と疑問符だらけです。

そこで緑友会役員のツテで3つの業者グループを現地に招き、個別にヒアリング。2000万円あれば基本部分は改修可とわかり、昨年6月の緑友会報で支援を訴えるとともに、後援会「みどり会」とPTAにも協力を求めて3団体共同出資体制を構築。本格的な改修案を求めて設計競技(コンペ)も催すことにしました。

こうして「資金」「設計」の二大課題の進め方は見えました。ところがこのヒアリングで、とんでもない懸念も示されました。撤去する天井の「アスベスト」です。耐熱・耐久性に優れ、高度成長期以降、国内で大量使用されましたが、解体時などに吸い込んで生じる健康被害が問題となり、2006年に製造・使用が全面禁止。含有建材の撤去や処分には細心の注意が必要で、かなりの費用と時間を要します。

学校食堂の建設は1962年。業者グループらは「古い建物ですからね。調べれば、アスベストがまず出ます」と妙にきっぱり。この「調べれば」がくせ者です。「調べないのも、アリ?」、私の中のヨコシマ君がささやきます。「もし出たら、おカネ要るで。食堂閉店の夏休み中に終わらんで。そもそも府教委が工事を許さへん」。けれどホールは子どもたちの集う場所。しかもことほぐべき記念事業。数日考えても代案は浮かばず、ヨコシマ君を叱り飛ばして調査を決めました。

とはいえ正式な検査結果をどうやって得るのか、いくらかかるのか、これまた疑問符だらけです。そんな昨秋、「ボクがやります」と名乗り出た人がいました。一級建築士でデザイン設計室を営む普通科24期生の木本圭二さん。「工事全体を監理できる人もいた方がいいですよ。ボク、ボランティアでやります」とどこまでも明るく積極的。費用、品質、施工内容、どれも何が妥当かわからない私たちにとって、本当にカッコいい白馬の騎士でした。

木本さんは、ヒアリングに応じてくださった業者グループの一人です。この日も工事やコンペの進め方についてご意見をうかがおうと学校にお越し願っていました。そんな私たちがよほど右往左往して見えたのでしょう。「緑友会の皆さんは無償で一生懸命。自分は60歳を超えた今まで母校のことは何もやっていない。コンペに出るより、今は自分に出来ることで母校にお返しする時」と思われたそうです。それからはコンペ、入札、追加計画で大奮闘。「天がこの人を遣わして事業を導いている」、私にはそう思えてなりません。

さてアスベスト。昨年11月、木本さんと二人で天井材の一部を削り、検査機関に送りました。1週間後にメール添付で届いた報告書。A4判3枚の中ほどにあった結果は「不検出」でした。

あれだけ出そうな話やったのに、なんで? 木本さんが思ってもみない理由を答えてくれました。「古すぎたんでしょうね。古すぎて、まだアスベストが使われてなかったんです」

もはや歴史的建造物⁉ さすが緑友会館! さすが還暦超えの大天井!

涙がにじんだのは大笑いしたせい。隠れてそっとぬぐいました。