会長だより ⑫ 支援の礎

(2023年5月21日=体育祭を終えて)

支援の礎

緑友会長 川本正人(21期)

 

コロナ禍の3年間で2度の中止に見舞われ、復活した昨年度も入場が大幅に制限された母校の体育祭が、21日、4年ぶりに平時の状態で開催されました。生徒数の減少で、団は1つ減って3つ(現在1学年7~8クラス)。6団時代の半分になりましたが、それでもマスコットが立ち、応援・アトラクション、騎馬戦、リレーなどの恒例種目がフルバージョンで繰り広げられて、伝統はしっかり継承。最高気温28度。雨で1日遅れたのが幸いと言えるほどの好天のもと、生徒も観客も、マスクなしの笑顔がひときわ輝いて見えました。

「高校時代の思い出」を問われて、この体育祭を挙げる人は多いと思います。ある期間、学年を超えて大勢の生徒が集まり、一つの作品や空間を創造する。その経験は、今考えてもかなり刺激的です。青春時代に味わったその新鮮さ、高揚感、達成感、あるいは独特な雰囲気への反発心などが、「今」の自分のどこかを形成しているという感覚、どなたにも多少はおありじゃないでしょうか。

東住吉高校の場合、こうした経験の場が、体育祭や卒業公演などの「行事」、盛んな「クラブ活動」、それらとの両立を目指す「学業」と、多面的にあります。ある教育研究機関の調査によると、母校への愛着度に影響を与えるのは、在校時の「積極的な取り組み」と「密な人間関係」だそうです。熱中する機会がいろいろあり、その分、友人や先輩・後輩、教師とのつながりが生まれやすい東住吉は、母校への愛着度を高める条件がそろっている、と言えそうです。

もう一つ、「ピーク・エンドの法則」にも触れておきます。全体的な印象は、最も感情が動いたとき(ピーク)と、一連の出来事が終わったとき(エンド)の記憶〝だけ〟で決まる、というものです。ノーベル賞を受けた心理・行動経済学者によって提唱されました。体育祭など最も印象深い出来事が「ピーク」。それら行事の打ち上げや、志望大学合格、母校からの巣立ちなどの思い出が「エンド」。この「ピーク」と「エンド」という2点の記憶が、高校生活全体の印象に大きな影響を与える、ということになります。

来年の創立70周年記念に計画している食堂改修「(仮称)緑友ホールプロジェクト」。間もなくお届けする会報に、みなさまのご協力を仰ぐ記事を載せています。100年を超える伝統校で耳にするような大口のご支援も、大勢でコツコツ寄せていただく小口のご支援も、どちらも誇れる浄財です。大事なのは、その礎となる母校への愛着心。積極的な「取り組み」と深い「人間関係」、さまざまな「ピーク」と「エンド」を経験した私たちは、母校への愛着で決してひけはとらない。2万8000人の卒業生の心に息づく思い出が、私たちの力だ。そう思うのです。

「母校応援の一つのカタチ」。緑友会活動を手伝ってくださる10期生が、体育祭直前にパパッと制作したプロジェクトパネルのフレーズです。グラウンドからわき上がる歓声を聞きながら、パネルの前でお願いチラシを配っていた私たちに、何人かが声をかけてくださいました。「私の卒業までに間に合うん?」と在校生。「もっと早くしてくれればよかったのにぃ」と卒業生。「頑張って下さいね」と年配の女性。

声に押され、「こういう日は、ホールを開放して『ホームカミングデイ』やな」などと、いずれ目にする「カタチ」に思いを馳せていたら、顔も腕も真赤に日焼け。「今の食堂、空調設備もないんやもんなあ。これから暑うなるのに」

卒業から45年たっての体育祭。今度は大人の心が揺さぶられました。