会長だより ㉖ 創立70周年ごあいさつ――人気の理由

(2024年6月1日=創立70周年の会報発行に寄せて)

人気の理由
――ぶっ飛び経験で、開け新未来――

緑友会長 川本正人(普通科21期)

今年度の公立高校一般入試(全日制)で、府内145校の半分近い70校が定員割れになったそうです。授業料無償化が段階的に始まり、公立離れが一気に進みました。府内東南部の旧第7学区は特に厳しく、定員を上回ったのは募集のあった14校のうち3校だけ。

そのひとつが私たちの東住吉高校です。

授業料に差がなければ、施設や難関大進学率の差で私立が有利といわれます。にもかかわらず母校の人気が不変だったのはなぜでしょう。私はそれを、「ぶっ飛んだ経験」ができる伝統と、それを共通体験としている卒業生や保護者、先生方の存在だと考えています。

体育祭や卒業公演などで、クラスや学年の枠を越えて協力したりぶつかったりする。何事かを成し遂げた結果、思ってもみなかった感動が生まれ、新しい景色が見える。東住吉高校にはそういう経験の場が、生徒全員に、いくつも用意されています。

発想がモノを言う時代です。スマホの発明のような斬新な未来を描く意志、AIの裏をかくような独創性が要ります。その礎を築くのは、夢中でのめり込むナマの経験。大学の予備校と化し、既存の知識だけで「わかったつもり」になったり、すでにある解答を速く出すことだけを競ったりする環境からは、規格外の“人財”は育ちにくいのではないでしょうか。

東住吉高校で得られるナマの経験は、卒業生たちの多くも共有しています。「あの行事で何をしたか」を披露しあうだけで、卒期を越えて話が進むのです。

また保護者の支援は、東住吉高校のルーツでもあります。先の敗戦から10年。厳しい時代の中で、「東住吉区(当時)に高校を」と地元の保護者たちが土地や資金を用意して誘致したのがわが母校です。緑友会館や図書館棟も保護者によって寄贈されました。

志は今も引き継がれています。コロナ禍で威力を発揮した電子黒板などのICT(情報通信技術)機器は、その数年前の2017年に卒業生と保護者らが協力して全教室に寄贈したものです。さらに今年度は、学校食堂を多目的ホールに改装する70周年記念事業を、卒業生、保護者、そして保護者のOB・OGが一体となって進めています。

先生方が伝統を大切にされていることは、先日の体育祭で「教員団」がマスコットやスタンドを立ち上げたことが物語っています。ノウハウを伝承し、教員の世代交代に備えたからです(会長だより㉕参照)。

かつて20年余りにわたって他校をうならせた霧ケ峰キャンプは修学旅行に変わり、長居公園を何周も回るマラソン大会もコロナ中断を機になくなりました。その一方、様々な国際交流やチャリティー100㎞リレーマラソンなど新たな伝統も育っています。コロナ禍が落ち着いた今、新装される多目的ホールは、子どもたちのリアルな出会い、語らい、表現の場となることでしょう。

私たちの母校は、昭和から平成、そして令和へと、激動の時代に2万8000人以上を送り出してきました。豊かな経験を胸と体に刻み込んだ人財ばかりです。経験が幸福度を高めることは、学術的な研究結果を見るまでもなく、多くの卒業生の実感でもあります。

これからも子どもたちがいろいろな経験を重ね、「ホンマ、楽しかった」と巣立っていく母校であるよう、100周年を難なく迎える不滅の母校であるよう、卒業生の皆様、お力添えをどうぞよろしくお願いいたします。