会長だより ㉘ 「安全第一」の覚悟

(2024年7月19日)

「安全第一」の覚悟

緑友会長 川本正人(普通科21期)

わかっちゃいるけど悩ましい。そんな言葉に「安全第一」があります。もとは「品質第二」「生産第三」との3点セット。「迷ったら安全最優先」を徹底させる標語です。

けれど実際は、「安全といっても、予算がなあ」と悩む場面がしばしば。創立70周年記念の母校食堂改修事業もそう。建物完成から61年余り。老朽化による危険個所が次々と見つかり、そのつど追加費用が必要になっているのです。

これまでは工事方法の見直し、ホール化設備の先送りにより、皆様からの浄財の範囲内で「安全第一」を貫く見通しを立ててきました。最大200万円の追加支出についても、緑友会役員9人から反対意見はなく、むしろ「当然」と積極的。

原則からブレない役員やスタッフを、改めて誇りに思った次第です。

さて、食堂改修着工から3日目の12日、また危険個所の知らせがありました。「天井を撤去したら、メインの梁(はり)の下部が削られていた。亀裂も入っている。大地震に耐えられない可能性が高い」

建物を支える骨組みが人の手で損傷⁉ もはや内装改修のレベルを超えており、学校から府教委に相談。返ってきたのは「補強したいならやっていただいてもいい」と、こちらに対応を委ねる答えでした。

今回の食堂改修事業について「なんで公費でやらないの?」というご質問が時折寄せられます。全く同感です。けれどそれでは何も進まないのが現状。ではどうするか。今回はそれを考えるご報告です。

食堂中央の梁(上)。下部がかき取られ、鉄筋が浮き出ている。(2024年7月)


問題のコンクリート梁は、食堂中央に渡されている南北12㍍の重要構造物。下部が全面的にかき取られ、鉄筋がろっ骨のように浮き出ています。建設当時に天井の高さを確保しようと数㌢削ったらしく、今なら建て直しを命じられてもおかしくないケース。さらに、東西の梁と交差する1か所に割れ幅1㍉以上の亀裂もありました。強度を低下させ、安全性を損なう「構造クラック」です。

知らせてくれたのは、工事をボランティアで監理している一級建築士の木本圭二さん(普通科24期)。すぐには問題ありませんが、大地震に見舞われたら梁が亀裂から曲がり、2階の床が垂れ落ちそうとのことでした。

すぐ学校に報告。17日には現場で対応を協議し、翌夕(昨日)には建物を管理する府教委の担当3人が来校。そこで示されたのが「鉄筋にさび止め」「クラックにモルタル注入」という補修方法。まるで骨折に赤チンみたい。しかも費用はこちら持ちという「提案」でした。

危険個所の指摘は、これまでもコンペや入札で訪れた業者の皆さんからありました。主なものは3つ。①熱源と異なる位置にある落ちかけの厨房排気フード(空調導入で閉め切ると一酸化炭素中毒の恐れ、地震で落下の恐れ) ②年代物の分電盤(感電・漏電の恐れ) ③階段下のコンクリート床の地下空洞化(陥没の恐れ)です。ゼロ災運動で「安全第一」と並んでよく言われる「ヒヤリ・ハット」(事故手前)の状態。見つかったのを幸い、①②は食堂との同時改修を決定、③は学校に公費で直してもらいました。

梁はどうするか。木本さんの試案は「亀裂の下に柱を立てて支える」。柱を外部で製作すれば取り付けは数日、費用も100万円くらい。この程度なら府教委の意志次第、と期待していました。

けれど府教委は「そこまでしなくても」と消極的。察するに、他にもグレーゾーンの建物がたくさんある中、ここだけにおカネは出せない、という立場なのかもしれません。

危険度について、木本さんの見解は真逆です。

「府教委提案のさび止め、モルタル注入は外壁向きの補修。梁の補強にはならない」

「最近の建物ならともかく、食堂は耐震対応の弱い60年以上前の建物。鉄筋の材質、太さ、本数が十分でなく、老朽化も進んでいる。見た目より弱い」

「鉄筋はコンクリートと一体で威力を増す。むき出しでは強度が落ちる」

「大地震の際、生徒が揺れの間に逃げ出せるとは限らない。2階床の落下が落盤のように急激でなくても、死傷者が出る可能性はある」……。

私たちはここまで、「安全第一」の覚悟で来ました。子どもたちの笑顔、青春の時間、まして命は「プライスレス」だからです。

これを原点に、大人の責任を果たす道を探ります。